貸金業法改正による「キャッシングの金利引き下げ」の効果はあったのか?

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貸金業法改正による「キャッシングの金利引き下げ」の効果はあったのか?

2010年6月に貸金業法が改正されたことによって、業界では大きな動きがありました。小さな消費者金融や利息制限法を超える金利で貸し付けをしていた業者は経営難になり、銀行の傘下に加わって生き残ったり破産してしまったところもあります。

 

この法改正は銀行業界も含めて大きな動きとなりました。

 

銀行にとって消費者金融の無担保融資のノウハウを取り込むことは大変魅力的であり、自社に取り込みたい分野でもあったからです。経営統合した銀行と消費者金融は、お互いにとってメリットのある合併を行ったところが多くあります。

 

出資法の金利での貸し付けは認められなくなったことで、事実上金利引き下げになりました。金利引き下げによって正規の業者から借りる側としては負担が少なくなる効果がありますが、本当にメリットがあったのでしょうか。

 

一部では金利引き下げや総量規制の導入は、本当に借りたい人が借りることができなくなる状況を作ってしまい、違法業者であるヤミ金への流入を増やしたという指摘もあります。

 

金利引下げの効果を簡単にまとめると

まず貸金業法改正前は2つの金利制限があったことを覚えておきましょう。

 

1つが出資法です。出資法では29.2%までの金利での貸し付けが認められています。それとは別に利息制限法があります。これは10万円未満の貸付は20%、100万円未満の貸付は18%、100万円以上の貸付は15%が上限金利とされています。

 

利息制限法自体の中身は変わっていませんが、一般的な貸し付けでの金利が利息制限法を基準にすることになり、出資法の制限で貸し出すことができなくなりました。

 

この出資法と利息制限法の間の金利帯のことを「グレーゾーン金利」と言います。

 

グレーゾーンとは、法的に正しいものとして言えるわけでもないけれど、違法とも言えない、あやふやな状態のことを指します。白黒はっきりつかない状態のことです。

 

貸金業法改正によってグレーゾーンが白黒はっきりし、29.2%で借り入れをしていた人は、どんなに金利が高くても20%まで金利引き下げになりました。同じ金額を借りていても9.2%の金利引き下げは大きな負担減少につながります。

 

それまで高い金利で利息支払いに苦しんでいた人たちにとってはとても大きな効果があります。

 

また裁判では過去のグレーゾーン金利も撤廃されることとなり、今まで払いすぎていた利息が戻ってくる「過払い金請求」も盛んに行われるようになりました。

 

消費者金融の経営を苦しめたのが、この過払い金請求です。

 

過去の利益がなくなったしまったことによって一気にキャッシュフローが悪化したのです。しかし法人税は払っているわけですから、業者にしてみれば税金を無駄に取られているような状態になってしまいました。

 

また、金利引き下げは借りる側にしてみればメリットがありますが、貸す側からしたら利益が減ることを意味します。そして低金利で貸すということは業者にとってもリスクが高くなりますので、簡単に貸すことができなくなったのです。

 

金利引き下げは一定の効果がありましたが、今まで健全に利用していた人たちまで借りにくくなる状況を作りました。

 

ただし簡単にお金を借りようと思っても借りることが難しくなったことによって、借金癖のあった人にとっては効果的でした。金利引き下げと併せて総量規制が導入されたことが、その大きな要因でもあります。

 

総量規制とは年収の3分の1以上の貸付を禁止する法律です。年収に見合わない借金がある人は、この時点で貸金業法のもと営業をしている会社からは借りることができなくなったのです。

 

借金をする人の中には本当に必要だから借りるのではなく、「とりあえず今お金があったらいいけど、給料日まで待てないし、お金は給料日後に返せばいいや」という甘い気持ちで借金をする人がいます。

 

こうした人は双曲割引傾向が強いと言われ、将来のことよりも目先のことに重点を置いて考えてしまう傾向があります。

 

金利引き下げによって借りにくくなる状況を作ったことで、甘い気持ちで借金をしていた人も借りにくくなりました。面倒な人は わざわざ借りるために収入証明書を用意したりしたくありません。そうなると借りようとすること自体が面倒になりますので、結果的には借金を減らすことに効果があったと言われています。

 

面倒くさがりな人は金利の引き下げ交渉もあまりしないため、高い金利のまま長い間借りていることもありました。交渉せずとも法律によって金利引き下げが適用されたことによって、過払い金請求によって借金の大部分が返済できたり、場合によってはお金が戻ってくるケースもありました。

 

過払い金問題については弁護士や司法書士の業界も巻き込んで、大きな一台ビジネスとなりました。過払い金請求で一気に利益を出した弁護士や司法書士もたくさんいます。

 

金利引下げで審査基準が厳しくなった

金利引き下げは利用する側からしてみれば一方的に有利でとてもよく聞こえるかもしれませんが、業者にとってはそうではありません。業者は金利による利息で収益を上げています。

 

貸し出しをしている人の中には一定の「破産者」「破産予備軍」が存在していますが、金利が高ければそうした不良債権になりそうな貸し出しも含めてカバーすることができました。金利引き下げをすることによって、業者は下手に破産予備軍の人と契約することができなくなったのです。

 

金利引き下げには審査が厳しくなるという効果もあるのです。

 

金利とリスクの関係は昔から存在しています。例えば代表的な低金利のローンと言えば住宅ローンがあります。住宅ローンはとても低金利で契約することができますが、

  • 他社でお金を借りていたら契約できない、
  • クレジットカードのキャッシング枠も審査の対象になる、

など、金融機関によって多少異なりますが、厳しい審査をしていることに違いはありません。

 

その厳しい審査を通り抜けることができた人だけが低金利のローンを組めるのです。カードローンの場合も同様で、金利が低ければ低いほど業者の利益が少ない分、安全な経営が求められることになります。

 

少しでも破産者を出してしまえば金融機関にとって大損害になるからです。現在のカードローンでも銀行系の金利の低いローンほど審査が厳しく、消費者金融の利息制限法ギリギリで貸し出しをしているローンほど、審査は緩くなるのです。

 

ただしこうした法律が守られるのは「正規」の金融業者だけです。

免許も持たず違法に営業をしている金融業者も存在しており、金融庁から注意勧告が出されたり、摘発されるケースも珍しくありません。また、正規の業者の中にも自社での貸し出しよりも「紹介屋」として利益を上げようとする業者が増え、免許はく奪となるケースもありました。

 

紹介屋の手口としては、まず広告を出してお金を借りたい人を募ります。

 

審査の結果自社で貸し付けができなかったけれど、他に貸し出しができそうな会社を紹介するなどと言って紹介料を要求します。また、紹介先に個人情報を伝えてて代行申し込みをすることがあります。どこの業者を紹介されるかはわからず、個人情報も流出してしまう可能性があり大変危険です。

 

その紹介先が正規の金融業者とも限りません

 

紹介屋が勧めるのは金融業者だけではなく、債務整理を勧めて弁護士や司法書士を紹介するケースもあります。

 

金利引き下げによって借りにくい状況を作り、これ以上借金地獄に陥る人を増やさないという意味では効果がありましたが、一方ではヤミ金へ流れてしまう人を増やしてしまったり、正規業者の中にも詐欺まがいな手口で利益を出そうとする会社がでてきたことで、金利引き下げには弊害もありました。

 

貸金業法改正から数年経ちましたが、いまだに意見が割れている状況です。

 

本当に生きていくためにお金が必要な人たちにとっては消費者金融は最後の助け舟のような存在でした。社会全体からしてみたら「消費者金融」のイメージはあまりよくありません。高い金利で貸し付けをして危ない会社と思っている人もいるでしょう。

 

しかしそれでも会社が存在しているのは、無担保融資に需要があり、必要とされていたからです。彼らからしてみれば困っていてもお金を貸してくれない銀行こそが悪であり、消費者金融は生活を助けてくれる心強い味方のように感じていたかもしれません。

 

 

確かに無理に貸し出しをして破産者を出してしまった会社の責任もありますが、借金をする人は何かしらの問題を抱えていることもあり、貸金業法の改正はこうした問題のある人たちを切り捨ててしまう結果にもなってしまったのです。


 

金利引き下げには単純に金利が下がること以外にも、様々な効果があったのです。

 

「総量規制」と「金利引き下げ」は、セットにする必要性

貸金業法改正では2つのものが規制されました。1つ目が先ほどからあがっている金利です。金利引き下げをすることによって業者は貸し出しをしても利益があまり上がらなくなってしまいました。

 

普通の会社であれば「薄利多売」として、利益が少なければたくさん売り出そうとします。小さな利益でもたくさん積みあがっていけば業績をそこまで下げることなく、会社を維持することができるからです。しかしこの「量」である「金額」も制限されることになりました。

 

それが総量規制です。総量規制では年収の3分の1以上の貸し出しをすれば行政処分の対象となることになりました。

 

総量規制の例外とされるものはいくつかありますが、一般の人への貸し出しにおいて例外が認められるケースはまれです。

 

例外として認められるのが

  • 個人事業主など自営業者向けの「ビジネスローン」、
  • 他社からの借り換えなどで一方的に条件が有利になるような「おまとめローン」、
  • 急な医療費などで緊急性の高い貸し出し、
  • 専業主婦で収入がない人が配偶者の年収と合わせた金額で申告できる「配偶者貸付」

です。

 

通常の貸付においてはほとんどこのような例外が認められることはありません。つまり消費者金融は利益が少なくなったところを量でカバーすることもできなくなってしまい、結果として規模を縮小せざるを得なくなったのです。

 

結果として業界1位の武富士が破産し、チワワのCMでも有名になったアイフルは事業再生ADRという私的整理をすることになりました。アイフルは法的な整理ではなかったため、その後の支援によってなんとか事業を立て直し、大手として独立を保っている唯一の消費者金融になりました。

 

そのほかの会社も多くは銀行に吸収されたり、子会社になることで生き残ることになりました。

 

この総量規制と金利引き下げはセットにして行うことで大きな効果を発揮しました。単純に金利を引き下げるだけでは、負担が減った分また借りる余裕を生み出してしまい、もっと借りようとしてしまいます。結果として返済困難な金額まで借金が膨れる危険性がありました。

 

量を規制することによって初めて借金を減らす効果を上げたのです。この法改正は消費者金融だけでなく、クレジットカードのキャッシング枠にも適用されます。

 

総量規制は1社からの借り入れでなく、対象となるすべての業者からの借入額をもとに算出しますので、複数の会社から借りている人は1社あたりの借り入れ可能額が小さくなります。

 

特に年収の低い人は借りることができなくなりますし、専業主婦では契約できない会社も多くあります。また、配偶者貸付を利用して借りることができたとしても、規制の満額分借りることはできず、多くても50万円程度が上限としているところがほとんどです。

 

しかし貸金業者がこうした経営難にあえぐなか、銀行は新しい戦略に出ていました。

 

消費者金融に代わって銀行が新しいカードローンの発行会社として台頭してきたのです。銀行には貸金業法が適用されません。そのため年収の3分の1以上の貸付をしても問題ないのです。

 

このような措置が取られたのは、金融庁が信用貸付の大幅縮小を懸念しており、銀行は堅実な営業によってしっかり審査を行うから大丈夫という安心があったからです。

 

しかし金利引き下げが行われて以降、銀行が今までの消費者金融のような立ち位置になりつつあり、貸付残高でみれば消費者金融業界を超えてきました。銀行でも18%という高い金利で貸し出しをしているところが多いので、本当に金利引き下げや総量規制で借金をする人に効果があったか疑問を投げかける声もあります。

 

効果があったのはあくまでも一部の借主であり、本当に借りたい人や違法業者にとっては逆効果になった可能性もあります。

 

マイナスになる場合もある

 

金利引き下げや総量規制は透明性の高い業界を作るという意味では大きな効果がありました

 

確かに昔と比較すると、消費者金融に対する悪いイメージも減ってきています。多くの消費者金融が銀行の傘下に入ったのも、その効果を引き出した1つの要因でしょう。

 

銀行と言えば堅実でクリーンなイメージがあるかもしれません。

 

現在独立系で残っている大手はアイフルだけですが、他の大手消費者金融はすべて銀行のグループ会社か、銀行のカードローンとしてその名を残しています。金利引き下げをしたことによって負担が減ったことで、イメージが改善するという効果もありました。

 

お金を簡単に借りることができるのはとても利便性の高いことです。しかし利便性が良くなることでマイナスの効果を発揮してしまう人たちもおり、すべての人たちにとってプラスになるとは限りません。

 

例えば双曲割高傾向の高い人の場合、簡単に借りることができれば借金をコントロールすることができなくなり、破産するリスクが高くなります。

 

日雇労働をして定職に就かない人の中にも、仕事を真面目に探すのが面倒だったり、すぐにお給料が入る日雇労働に魅力を感じている人もいます。日雇労働が悪いというわけではありませんが、定職についている人と比較すれば給料も安く、手っ取り早くお給料がもらえるというところに重点を置いている傾向があります。

 

通常であれば多少探すのが面倒でも、待遇が良くて後々楽になるような仕事を選ぶ人が多くいます。しかしこのように未来を重視するよりも目の前のことに重点を置いている人は、少なからず存在しているのです。

 

双曲割引傾向の強い人は、面接での心理的圧迫や求人を探す手間を大きなコストとして見る人がいます。

 

人は考え方がそれぞれ違っていますので、絶対それは損だと思っていても、その損を続けてしまう人がいるのです。金利引き下げはこうした面倒くさがりな人達には大きな効果をもたらしたと言えるでしょう。

 

本当に必要な人や真面目な人が借りにくくなるという逆効果もありましたが、総じて業界全体がクリーンになったのは間違いありません。

 

金利引き下げがマイナスの効果を発揮してしまうのは一部の人たちだけです。全体から見れば大きな効果を上げていると言えます。何事でもそうですが、すべての面からみてプラスの効果を期待することは難しく、何か変化させればどこかでマイナスの効果が生まれることがあります。

 

金利引き下げと総量規制によって金融機関の審査は厳しくなり、無秩序な貸し出しが規制されました。

 

ただし信用力さえあれば、借り入れ後に金利の引き下げ交渉をすることができますし、年収がアップすれば貸し出し可能額も増えます。

 

上手に借金をする人は、なるべく1つの会社と深い付き合いをし、超低金利のカードローンを目指すのも良いかもしれません。有利な条件になればなるほど持続可能な借り入れをすることができるようになります。

 

金利の低いカードローンや限度額の高いカードローンはそれだけ会社から信用をされている証拠にもなります。

 

今まで気軽に借金をしていた人も気持ちを切り替え、貸金業法改正の効果を高めるためにも信用力を高めるような借り入れ方法を心掛けると良いでしょう。

 

法改正がマイナス効果になってしまったかどうかは人それぞれです。当時借りていた人にとっては大きなメリットがありましたが、これから借りようと思っていた人やすでに借金が多くて借りることができない人にとってはマイナスになった可能性もあります。

 

借金の問題はとても大きな負担になりますが、借り先は会社だけではありません。国や地方自治体の制度を利用して低金利で借りることもできます。場合によっては法的整理で出直すという選択肢もあります。問題を解決するのにはさまざまな選択肢が残されていることも覚えておきましょう。


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